べん毛モーターの回転計測において,慣性力,遠心力は考慮すべきか?
レイノルズ数からの検討
レイノルズ数は,流体力学における慣性力と粘性力と比で定義される値で,無次元となります.
\( \Large \displaystyle Re = \frac{ u \ L}{\nu} = \frac{\rho \ L \ u}{\mu} \)
ここで,
u : 代表速度 [m/s]
L : 代表長さ [m]
ν : 動粘性係数 [m2/s]
ρ : 密度 [kg/m3]
μ : 粘性係数 [Pa・s]
次元は,
\( \Large \displaystyle \frac{ \frac{m}{s} \cdot m}{\frac{m^2}{s}} = \frac{kg}{m^3} \cdot m \cdot \frac{m}{s} \frac{m^2 \ s^2}{kg \ m \ s} = 1\)
となり,無次元となります.
ただ,私の分野では,動粘性係数はあまり使わない,速度は,vでしょう!粘性係数はμ?μはミクロンという接頭語なので違和感がある,粘性係数はηでしょう!,ということから,
\( \Large \displaystyle Re =\frac{\rho \ L \ v}{\eta} \)
v : 代表速度 [m/s]
η : 粘性係数 [Pa・s]
を使わさせていただきます.
実際の実験でのパラメータ
水溶液中のポリスチレンビーズの運動を考えるので,
\( \Large \displaystyle \rho = 1.05 \left[ \frac{g}{cm^3} \right] =1.05 \times 10^3 \left[ \frac{kg}{m^3} \right] \)
\( \Large \displaystyle \eta = 10^{-3} \ Pa \cdot s \)
を使います.
速度は,円周上の直線速度として考えるとします.
半径R,回転速度, f Hz,の場合,
円周:2πR
速度:2πR・f
となるので,半径 0.5㎛,100 Hz,の場合,
\( \Large \displaystyle v = 2 \pi \cdot 0.5 \times 10^{-6} [m] \cdot 100 [1/s] = 3.14 \times 10^{-4} [m/s] \)
\( \Large \displaystyle L = 2 R = 2 \cdot 0.5 \times 10^{-6} [m] = 10^{-6} [m] \)
となるので,レイノルズ数は,
\( \Large \displaystyle Re =\frac{\rho \ L \ v}{\eta}
= \frac{ 1.05 \times 10^3 \left[ \frac{kg}{m^3} \right] \cdot
3.14 \times 10^{-4} [m/s] \cdot 10^{-6} [m]}{10^{-3} \ Pa \cdot s} = 0.0003297 \)
ととても小さく無視できる値となるので,慣性力は無視することができます.
ビブリオ菌のように,数百Hzで回転したとしても,一桁程度の変化なので,やはり無視できます.
次ページには,運動方程式,から検討していきます.